入退院を繰り返していた親が亡くなった場合の準確定申告と医療費控除の計算

はじめに

親が亡くなった場合、亡くなった年の所得について 準確定申告 を行う必要があります。
特に入退院を繰り返して医療費が多かった場合、正しい控除額を申告することで、税金の還付を受けられる可能性 があります。

この記事では、準確定申告の概要、医療費控除の計算例、申告書の記入例、そして e-Taxを使って申請する場合のポイント まで詳しく解説します。


実際に申告してみた体験談

先週、亡くなってから49日が経過したタイミングで、ようやくe-Taxで準確定申告を済ませました。
最初は税務署に直接行くつもりでしたが、マイナンバーカードとICカードリーダーがあれば自宅から送信できることを知り、オンラインで完結できました。

入力画面では、医療費控除をExcelで添付することはできず、病院や薬局ごとに金額を入力しなければならない点が少し手間でした。
それでも、書類を印刷して郵送するよりはスムーズで、送信後すぐに受付結果が確認できました。

e-Taxの操作に不安がある方でも、手順を一度覚えてしまえば次回以降はかなり楽になります。


準確定申告とは

準確定申告とは、亡くなった人の その年1月1日から亡くなった日までの所得 について行う確定申告です。
申告は、原則 相続人が死亡を知った日から4か月以内 に行う必要があります。

対象となる所得の例:

  • 給与収入

  • 年金収入

  • 不動産収入

  • 医療費控除や生命保険控除などの所得控除


医療費控除のポイント

医療費控除の計算方法

医療費控除の金額は以下の式で計算します。

医療費控除額 = 支払った医療費 − 保険金などで補填された金額 − 10万円(または総所得金額の5%の少ない方)

具体例

亡くなった親の総所得:200万円
その年の入退院や通院で支払った医療費:25万円
健康保険などで給付された金額:5万円

計算手順:

  1. 支払った医療費 25万円 − 保険金 5万円 = 20万円

  2. 総所得の5% = 200万円 × 5% = 10万円

  3. 医療費控除額 = 20万円 − 10万円 = 10万円

この場合、10万円が医療費控除として所得から控除されます。


準確定申告の申告書記入例

準備する書類

  • 源泉徴収票(給与や年金がある場合)

  • 医療費の領収書

  • 保険金や給付金の支給証明書

記入例(概略)

記入欄内容
申告者相続人の氏名・住所
亡くなった人の氏名○○ ○○
亡くなった日2025年○月○日
所得の種類給与所得・年金所得など
総所得金額給与・年金等の合計額
医療費控除上記の計算例により10万円
所得控除合計医療費控除含め必要な控除額
税額計算所得税額を算出
還付・納付還付金がある場合は銀行口座を記入

ポイント:
申告書は「確定申告書B」の準確定申告用として記入し、亡くなった方の署名欄は空欄で、相続人が署名します。


e-Taxで申請する場合のポイント

e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、自宅からインターネット経由で準確定申告を行うことができます。
ただし、亡くなった方の申告であるため、いくつかの注意点があります。

✅ Web版では準確定申告ができない

準確定申告は、e-TaxのWeb版(ブラウザ版)では対応していません。
亡くなった方の申告データを扱うため、より詳細な入力ができる 「e-Taxソフト(PC版)」のインストールが必要 です。

ブラウザからアクセスする「確定申告書等作成コーナー」では準確定申告が選択できません。そのため、e-Taxを使う場合は以下の流れになります:

  1. 国税庁サイトから e-Taxソフト(ダウンロード版) をインストール

  2. 亡くなった方の情報と相続人代表者の情報を入力

  3. マイナンバーカードで署名して送信

この点を知らずにWeb版で進めてしまう人が多く、途中で提出できないトラブルが起こりがちですので注意しましょう。


✅ 委任状は不要

準確定申告は相続人本人が行うため、別途の委任状は必要ありません。

✅ 相続人の署名が必要

送信時には、**相続人の電子署名(マイナンバーカードによる署名)**を行う必要があります。
亡くなった方本人の署名は不要です。

✅ 医療費控除の入力方法に注意

医療費控除は Excelのシートを添付するだけでは認められません。
e-Taxの「医療費控除の入力画面」で、医療機関ごとに支払額を入力する必要があります。

✅ 相続人代表者のマイナンバーを入力

代表して申告する相続人のマイナンバーを入力します。

✅ 添付書類の扱い

領収書や保険金の証明書は原則提出不要ですが、5年間は自宅で保管義務があります。
税務署から求められた場合に提示できるようにしておきましょう。


相続の評価額、納税額の欄は空欄でいい

申告書には「相続の評価額」「納税額」などの入力欄がありますが、
これは相続税の対象となる場合の補足情報であり、準確定申告そのものには必須ではありません。

亡くなった方の財産(預金や不動産など)の評価がまだ確定していない段階でも、
所得税の準確定申告は期限内に提出する必要があります。

したがって、現時点で相続財産の詳細が未定の場合は、
これらの欄を空欄のままで送信して問題ありません。

もし後日、相続税の申告が必要になった場合は、別途その時点で提出すれば大丈夫です。


手続きの流れ

  1. 必要書類を整理する
     医療費領収書、源泉徴収票、保険金証明など

  2. e-Taxソフトまたは税務署へ提出
     e-Taxソフトで送信するか、亡くなった方の住所地の管轄税務署に提出

  3. 納税または還付
     医療費控除で税金が戻る場合、還付手続きを行う
     追加納税がある場合は期限内に納付


まとめ

入退院を繰り返して亡くなった親の準確定申告では、医療費控除を活用することで税金の還付を受けられる可能性があります。

  • 準確定申告は 死亡を知った日から4か月以内

  • 医療費控除は 自己負担分から保険金などを差し引いて計算

  • e-Taxで申請する場合は 相続人の署名とマイナンバー入力が必要

  • Web版では提出できず、e-Taxソフトのインストールが必須

  • 相続評価額や納税額の欄は未確定なら空欄でOK

今回、49日を過ぎてようやくe-Taxで申告を終えましたが、
オンライン申請の手順を一度経験しておくと、今後の相続関連の手続きにも役立ちます。

払いすぎた税金を確実に取り戻すためにも、早めの準備と正確な入力が大切です。

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