地方都市から撤退するメガバンク ― 支店縮小が意味するもの
1. 支店縮小の背景
三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などのメガバンクは、全国で支店網の大幅な縮小を進めています。その要因は以下の通りです。
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人口減少と地域経済の縮小:地方での預貸取引は伸び悩み、支店維持コストが収益を圧迫。
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デジタル化の進展:ネットバンキングやスマホアプリの普及により、窓口での取引需要が大幅に減少。
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収益構造の変化:長期の低金利環境により、貸出収益が低迷。効率化が経営課題に。
こうした環境変化により、メガバンクは「支店統廃合」「ATM網の削減」「無人化店舗の導入」といった戦略を強めています。
2. 地域別の撤退・統廃合事例
茨城県
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水戸市や土浦市では、みずほ銀行・三菱UFJ銀行が相次いで支店統合を実施。
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常陽銀行や筑波銀行といった地銀が圧倒的なシェアを持ち、メガバンクの競争力は限定的。
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その結果、メガバンクは「地域密着度の低い支店」を縮小する動きを強めている。
千葉県
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木更津市:みずほ銀行は2019年12月、三菱UFJ銀行が2022年12月に、三井住友銀行が2023年7月に駅東口支店を閉鎖。ATMは残るが有人窓口は消失。
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松戸市(三菱UFJ銀行):駅前支店を撤退し、西口支店に統合。
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八千代市(みずほ銀行):2023年9月に支店閉鎖、勝田台支店へ統合。
千葉県は千葉銀行を中心に地銀の存在感が強く、メガバンクは主要都市以外から段階的に撤退している。
神奈川県
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横浜市・日吉(三菱UFJ銀行):2020年に元住吉支店と統合し、有人店舗を廃止。
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相模原市・相模大野(三菱UFJ銀行):2021年に町田支店へ統合、店舗閉鎖。
神奈川県は横浜銀行など地銀の影響力が強く、加えて都市部ではネット銀行利用が拡大。メガバンクの店舗削減は他県よりも早期から進んでいる。
3. 支店縮小が示す構造変化
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金融インフラの再編:かつて主要駅前に必ず存在したメガバンクの店舗が消え、地域金融の主役は地銀・信金へ移行。
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サービスの二極化:高齢者や法人の一部は対面を必要とするが、若年層や中小企業の多くはデジタルチャネルへ移行。
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効率経営への転換:メガバンクは「全国に物理的に拠点を持つ」モデルを捨て、首都圏中枢・海外・デジタルを軸とした再編を進めている。
4. まとめ
茨城・千葉・神奈川の事例に見られるように、メガバンクの地方都市撤退は、
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地域金融市場の縮小
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デジタル化による顧客接点の変化
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地銀・信金への役割移譲
を象徴しています。これは単なる店舗削減ではなく、日本の金融インフラそのものの再編を意味する動きであり、今後も加速が予想されます。
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