EVはなぜ下火になったのか?

 



近年、自動車業界の大きなトレンドとして注目されたEV(電気自動車)。しかし2020年代半ばにかけて、勢いがやや鈍化し「下火になったのでは」と言われる場面も増えてきました。本記事では、その背景と理由を整理します。

1. インフラ不足

EV普及の大きな課題は充電インフラです。高速道路や地方都市では急速充電器が十分に整備されておらず、長距離移動に不安が残ります。ユーザーにとって「どこでも安心して充電できる環境」が整わない限り、普及は伸び悩みます。


2. 車両価格の高さ

EVはバッテリーコストが大きな割合を占め、同クラスのガソリン車より高額になりがちです。補助金や減税がある国では一時的に販売が伸びましたが、政策が縮小すると需要も減速しました。


3. バッテリーの課題

  • 航続距離の不安:カタログ値よりも実走行距離が短いことが多く、長距離ドライブを避けるユーザーも。

  • 充電時間:ガソリン補給に比べて圧倒的に時間がかかる。

  • 寿命とリサイクル:劣化や廃棄コストの課題が残っている。


4. エネルギー政策との関係

国や地域によっては再生可能エネルギーの普及が進まず、発電の多くを化石燃料に頼っています。その場合「EVは走行中に排ガスを出さないが、発電所でCO₂を出している」という批判もあり、環境メリットが限定的と見なされることもあります。


5. ユーザーの期待と現実のギャップ

初期のEVブームでは「次世代の主役」として期待されましたが、実際に使ってみると航続距離・充電・価格面で不便さが目立ちました。その結果、購入をためらう層が増加しています。


6. 競合技術の台頭

ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、水素燃料電池車(FCV)など、EV以外の選択肢も進化しています。特にHVはインフラ不要で使い勝手がよく、消費者にとって現実的な選択肢となっています。


7. 中国車と国産車の動向

EV市場の勢いが変化する中で、中国メーカーと日本の国産メーカーの立場にも違いが出ています。

  • 中国車:BYDをはじめとする中国メーカーは、国の政策的な後押しと圧倒的な低価格戦略で世界市場に大量投入しています。航続距離やコストパフォーマンスに優れるモデルも増え、新興国を中心にシェアを伸ばしています。

  • 国産車(日本):トヨタやホンダなどは、EV単独ではなくハイブリッドや水素も含めた多様な技術戦略を取っています。結果としてEV投入のペースは中国より遅く、「実用性重視の消費者向け」には強い一方、グローバルEV市場での存在感は相対的に薄れています。

このように、中国は「数で攻める」、日本は「堅実に多様化する」という戦略の違いが、市場での立ち位置を分けています。


まとめ

EVが「下火になった」と言われる背景には、

  • インフラ不足

  • 車両価格の高さ

  • バッテリーの技術的課題

  • 政策支援の揺らぎ

  • ユーザー体験の不満

  • 他技術との競合

  • 中国車の攻勢と国産車の慎重姿勢
    が重なっています。

とはいえEV市場そのものが消えるわけではなく、商用車や都市部での短距離利用、環境規制の厳しい地域では今後も成長が期待されます。EVは「万能の解決策」ではなく、自動車産業における複数の選択肢のひとつとして位置づけられる段階に入ったと言えるでしょう。

コメント

このブログの人気の投稿

WPF経験者が挑戦!.NET MAUIで初スマホアプリ「写時くん」を公開してみた

洋上風力発電の今:三菱商事のゼロベース見直しが示す未来

SSHなしでLet's Encryptの証明書を使って共有サーバーをHTTPS化する方法【完全ガイド】