COBOLとFORTRAN ― なぜ仕事の運命が分かれたのか
COBOLとFORTRAN ― なぜ仕事の運命が分かれたのか
ITの歴史を振り返ると、COBOLとFORTRANはどちらも黎明期から使われてきた古典的なプログラミング言語です。ところが、現代において両者の立ち位置は大きく異なります。COBOLは依然として求人があり続けるのに対し、FORTRANは研究分野を除いてほとんど見かけなくなりました。本記事では、その理由を整理してみます。
COBOLが今も生き残る理由
1. 社会インフラ直結の存在感
COBOLは1960年代から銀行、保険、行政の基幹システムで使われてきました。勘定系や住民管理といった「止められないシステム」に深く根付いており、今でも社会を支える柱となっています。
2. 移行の困難さ
数百万〜数千万行規模のシステムが稼働しており、全面的な書き換えには膨大なコストとリスクが伴います。「動いているものを無理に変えない」という判断から、保守と延命が選ばれるケースがほとんどです。
3. 人材不足が需要を生む
若い世代が学ばないためCOBOL技術者は減少しています。しかしシステムは動き続けるため、逆に希少性が高まり、高単価案件としての需要が残っています。
FORTRANが衰退した理由
1. 主戦場は研究分野に限定
FORTRANは数値計算やシミュレーションで強みを発揮しましたが、主に研究や工学用途にとどまりました。COBOLのように社会インフラを担う立場にはなりませんでした。
2. 代替技術の発展
数値計算はC/C++やPython(NumPy/SciPy)、MATLAB、Juliaなどで代替可能です。特にPythonの普及により、研究者やエンジニアが自力で柔軟に計算できるようになり、FORTRANを使う必然性は大きく減りました。
3. 教育の場からの消失
筆者自身も学生時代にFORTRANを習った経験がありますが、現在ではほとんどの教育機関で教えられていません。若手が学ぶ機会がなく、人材供給も途絶えがちです。
4. 求人市場に出にくい
需要が残っているのは気象シミュレーションや一部の研究所など特殊分野に限られます。そのため求人として一般市場に出ることはほとんどありません。結果として「FORTRANの仕事は見つからない」という印象が強まります。
運命の分かれ道
COBOLは社会インフラを支えるため消せない存在
FORTRANは代替可能な研究ツールであり、新技術に取って代わられた
同じ時代に誕生した言語でも、用途や役割によって仕事としての寿命は大きく変わりました。COBOLは「古くても消せない必需品」、FORTRANは「役割を終えつつある専門道具」として、その運命が分かれたのです。
💡 結論:
COBOL → 求人が今も残るレガシーの王者
FORTRAN → 一部研究所で生き残るが、一般市場では衰退
過去の言語の歩みを知ることで、これから学ぶべき技術の選び方にもヒントが得られるでしょう。
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